アルトリコーダー、オーボエまたはテナーリコーダーとオブリガートチェンバロのための 4声の協奏曲 ト長調
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作曲家と作品について
バロック時代最大の作曲家ゲオルグ・フィリップ・テレマン(1681~1767)は4000曲に及ぶ作品を残しました。ヘンデルの約600曲、ヴィヴァルディの約800曲、J.Sバッハの約1000曲に比べると桁違いの作品数です。また、多作家にもかかわらず個々の作品は個性的で斬新なアイディアに満ちており、テレマンの底知れない創造力をうかがわせます。40歳でハンザ同盟の中心都市ハンブルグに赴任したテレマンは、そこで生涯を終えるまでの40数年間、数々の大仕事を成しました。
本書の作品は、アルトリコーダー、オーボエ、ヴァイオリンと通奏低音のための「4声の協奏曲(TWV43:D6)」をアルトリコーダー、オーボエまたはテナーリコーダーとオブリガート・チェンバロ用に書き換えたものです。
バロック時代の器楽曲の多くは、D4~D6の音域で書かれており、作曲者の指定にかかわらず、様々な楽器で演奏することが出来ましたが、この作品では音域上から明確に楽器が指定されています。アルトリコーダーパートとヴァイオリンパートを他の楽器で演奏することはできません。オーボエパートは、フルート・トラヴェルソやヴァイオリン、パルドゥシュ・ヴィオールなど様々な楽器で演奏可能です。テナーリコーダーでも演奏可能ですが、ヴァイオリンとの音量バランスから適正な選択とは思えません。テナーリコーダーは主にコンソート用の楽器ですので、テナーリコーダーを独奏楽器とした作品はほとんどありません。ちなみにバスリコーダーもコンソート用の楽器ですが、例外的な作品としてC.Ph.E.バッハの「バスリコーダー、ヴィオラと通奏低音のためのトリオソナタ ヘ長調」があります。
本書では、ヴァイオリンパートをオブリガート・チェンバロの右手に配置しましたので、オーボエパートにテナーリコーダーを用いても音量バランス的に問題なく演奏できます。
この作品については少なくとも3つの写本が存在します。J.J.クヴァンツ(1697-1773)の写本、J.S.エンドラー(1694-1762)の写本、ダルムシュタット図書館所蔵の写本(筆者不明)です。クヴァンツとダルムシュタットの写本はスコア形式、エンドラーの写本はパート譜形式で書かれています。現在の出版譜の多くはクヴァンツかエンドラーの写本を採用していますが、古楽演奏者の多くは。ダルムシュタットの写本を採用しています。ダルムシュタットの写本は最もシンプルなもので、唯一通奏低音に数字が記載されています。W.ヴェル(1902-1976)の編集による1939年の出版譜は、明らかにダルムシュタットの写本を基にしています。本書もダルムシュタットの写本を基に編集しました。チェンバロパートに付加した内声はダルムシュタットの写本の数字に基づきリアリゼーションしたものです。付加した内声は少し小さい音符で記していますので、通奏低音の数字を参照して、自由に変更、追加、省略して演奏してください。
BAND415 岩岡秀夫